寺村輝夫『ぼくは王さま』

フォア文庫 寺村輝夫 「ぼくは王さま」

【メモ】

・うちの子どもたちが、上の子が年長さん、下の子が年少さんになる年の春に購入。ぼくも小さい頃、何度も何度も読み返したこの本、子どもたちにも大ウケで、購入当初1〜2ヶ月くらいは、寝る前の読み聞かせのリクエストは必ずこれ、というくらいでした。

・この一冊に、一話30ページ程度の短編が4作収録されています。30ページとはいえ文字が大きいので、1話はそこまで長くありませんが、親が読み聞かせても10分15分くらいは掛かるくらいの長さかなと思います。長からず短からずのこのボリューム感、「子どもの読書」の一番初めの取っ掛かりとしては、結構適した感じなのではないかなと。

・最初は親が読んで聞かせていましたが、そのうち、上の子どもは自分で読むようになりました。文庫とはいえ、文字も比較的大きく、漢字も小学校1年の最初に習う程度のものしか使われていないので、幼稚園年長さんくらいでも、本に慣れた子だったら十分に読めると思います(当然、すべての漢字にルビが振られています)。

・でも、もしかすると、いまの子どもたちは、あまり卵も食べないんですかね?他にもたくさんおいしい食べ物があるし、アレルギーとかもあるし。でも、たまごが大好きな王さまは、いつの時代でもかならず子どもたちに受け入れてもらえるのではないかと、個人的には思ってます。

 

【本文書き出し】

”第1話 ぞうのたまごのたまごやき

王さまに、

−−−なにが、一ばんすきですか—。

ときいたら、

「たまご。」

とこたえました。

「たまごやきが一ばんうまいよ。あまくってふわーりとした、あったかいのがいいね。」

王さまは、朝も、ひるも、夜も、いつもたまごやきを食べていたんだそうです。

王さまのうちに、赤ちゃんが、うまれました。まるまるとふとった、たまごやきのようにかわいらしい、王子さまでした。

王さまは、すっかりよろこんで、大臣の、ワンさんと、ツウさんと、ホウさんをよんで、いいました。

「おいわいをしよう。国じゅうの人たちを、おしろにあつめて、うんとごちそうをしてあげよう。にぎやかに、うたをうたったり、おどったりしようではないか。」

ワン大臣は、

「は、はっ、かしこまりました。」

ツウ大臣は、

「さっそく、よういをいたしましょう。」

ホウ大臣は、

「ごちそうは、なににしましょうか、王さま。」

といいました。王さまは、

「ごちそうは、たまごやきにきまってるさ。あつまった人たちみんなに、たまごやきをごちそうするんだ。あまくって、ふわーりふくれた、あったかいのがいいね。」

といいました。が、たいへんです。国じゅうの人があつまるんですから、たまごは、いくつあってもたりません。なん百、なん千もいるのです。

ワン大臣は、いいました。

「王さま、国には、そんなにたくさんたまごがありません。」

ツウ大臣も、いいました。

「にわとりは、一どに、なん十もたまごをうめません。」

ホウ大臣も、いいました。

「ほかのごちそうで、まにあわせましょう。」

王さまは、これをきいて、おこってしまいました。

「いや、いかん。ぜったいにたまごやきだ。たまごやきでなかったら、おいわいは、やめだ。」

王さまって、わがままで、いばってますね。

大臣が、こまっていると、王さまは、こんなことを、いうのです。

「じゃあ、ぞうのたまごをもってくればいいではないか。ぞうのたまごなら、大きいからいいよ。大きなフライパンをつくって、一どにやくんだ。そうすればいいだろう。あまくってふわーりした、あったかいのが、みんなで食べられるよ。」

ワン大臣は、ポンと手をうって、いいました。

「ほほう、なるほど、ぞうのたまごなら大きいでしょうね。一どに、百人まえは、できますよ。では、すぐに、兵隊にいって、ぞうのたまごを七つか八つ、見つけてこさせましょう……”

 

【表紙及び冒頭5ページ】

フォア文庫「ぼくは王さま」表紙_[0]フォア文庫「ぼくは王さま」本文1_[0]フォア文庫「ぼくは王さま」本文2_[0]

フォア文庫「ぼくは王さま」本文3_[0]フォア文庫「ぼくは王さま」本文4_[0]フォア文庫「ぼくは王さま」本文5_[0]

 

【子どもの読書に関わるデータ】

ふりがなの状況:総ルビです。漢字はある程度使われていますが、おそらく、全て小学校1年で習うレベルのものに収まっていると思います。

文字の大きさ:大きい。文庫サイズとしては、ほぼ最大サイズ

所感:本に慣れた子であれば、幼稚園の年長さんくらいでも十分に読めるレベルかと思います。文字の大きさ、漢字やルビの状況、本の内容、どれをとっても、子どもに「読書」をさせる最初の一冊として選定できる「良い本」だと思います。

 

【基本データ】

フォア文庫

1979年11月 第1刷発行

作・寺村輝夫 画・和歌山静子「ぼくは王さま」

ISBN978-4-652-07011-6

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J.K.ローリング作 松岡佑子訳『ハリー・ポッターと賢者の石』

静山社ペガサス文庫 J.K.ローリング 作 松岡佑子 訳『ハリー・ポッターと賢者の石』

【メモ】

・さすがは、全世界で4億5千万部以上も売れた大人気小説の第一作目、子どものみならず、大人でもとても楽しく読める内容でした。お時間とれるようであれば、「親子で読書」もいいかと思います。

・総ルビで、小学校低学年からでも読めるようになっています。小学校1年生(当時)の長男が、まるで本に引き込まれるかのように、あっというまにシリーズ全作を読破してしまいました。

 

【本文書き出し】

”第<1>章 生き残った男の子

プリベット通り四番地の住人ダーズリー夫妻は、「おかげさまで、私どもはどこから見てもまともな人間です」というのが自慢だった。不思議とか神秘とかそんな非常識はまるっきり認めない人種で、まか不思議な出来事が彼らの周辺で起こるなんて、とうてい考えられなかった。

ダーズリー氏は、穴あけドリルを製造しているグラニングズ社の社長だ。ずんぐりと肉づきがよい体型のせいで、首がほとんどない。そのかわり、巨大な口ひげが目立っていた。奥さんのほうはやせて、金髪で、なんと首の長さが普通の人の二倍はある。垣根越しにご近所の様子を詮索するのが趣味だったので、鶴のような首は実に便利だった。ダーズリー夫妻にはダドリーという男の子がいた。どこを探したってこんなにできのいい子はいやしない、というのが二人の親ばかの意見だった。

そんな絵に描いたような満ち足りたダーズリー家にも、たった一つ秘密があった。何より怖いのは、誰かにその秘密をかぎつけられることだった。

−−−あのポッター一家のことが誰かに知られてしまったら、いっかんの終わりだ。

ポッター夫人はダーズリー夫人の実の妹だが、二人はこの数年、一度もあってはいなかった。それどころか、ダーズリー夫人は妹などいないというふりをしていた。何しろ、妹もそのろくでなしの夫も、ダーズリー家の家風とはまるっきり正反対だったからだ。

−−−ポッター一家がふいにこのあたりに現れたら、ご近所の人が何と言うか、考えただけでも身の毛がよだつ。

ポッター家にも小さな男の子がいることを、ダーズリー夫妻は知ってはいたが、ただの一度も会ったことがない…”

 

【表紙及び冒頭5ページ】

静山社ペガサス文庫 ハリー・ポッターと賢者の石1-1 表表紙_[0]静山社ペガサス文庫 ハリー・ポッターと賢者の石1-1 本文1静山社ペガサス文庫 ハリー・ポッターと賢者の石1-1 本文2

静山社ペガサス文庫 ハリー・ポッターと賢者の石1-1 本文3静山社ペガサス文庫 ハリー・ポッターと賢者の石1-1 本文4静山社ペガサス文庫 ハリー・ポッターと賢者の石1-1 本文5

 

【子どもの読書に関わるデータ】

ふりがなの状況:総ルビ(全ての漢字にふりがなが振られています)

文字の大きさ:小さい、大人向け文庫とほぼ同等サイズ

読んだ人(当時):小学校1年生・月齢7歳3ヶ月・本好き

所感:「ハリー・ポッターが好き」な「本好き」という条件はあるが、全ての漢字にふりがなが振られており、内容的にも、小学校1年生でも十分に読めるレベル。続編シリーズまで含めて、引き込まれるように楽しそうに読んでいました。

 

【基本データ】

静山社ペガサス文庫

2014年3月4日 初版発行

J.K.ローリング 作 松岡佑子 訳『ハリー・ポッターと賢者の石 1-1』

ISBN978-4-86389-230-9

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