文 中山 茂大 写真 阪口 克『世界中からいただきます!』

文 中山 茂大 写真 阪口 克『世界中からいただきます!』

【メモ】

・東はモンゴル、カンボジア、パプアニューギニア、タイ、ラオス、ネパール、インドから、西はモロッコ、ハンガリー、ギリシャ、南米へ飛んでペルーまで。世界中十七カ国の「ごはん」と「台所」を、たくさんの写真とともに紹介する、ちょっと変わった紀行文。

・「食」という、どこの地域の、どんな人にも共通するよろこび、楽しみを通して見えてくる、各国、各地域ごとのリアルな日常生活、文化や習慣。その国の基本的なデータもあわせて紹介されています。読書でありながら、実は社会科。一石二鳥。おもしろいし、一石三鳥かも。

・テレビの番組に例えていうならば、ドキュメンタリー番組であり、紀行番組であり、料理番組であり、グルメ番組でもある、そんな内容。「世界・ふしぎ発見!」や「イッテQ!」的な。

 

【子どもの読書に関わるデータ】

ふりがなの状況:総ルビで、全ての漢字にふりがなが振られています。

文字の大きさ:小さい。

所感:読書というよりは、どちらかといえば、「世界各地の文化・習慣を紹介する社会科系エッセイ」という感じの本ですが、異文化を食という切り口でまとめた内容は、小学校中学年〜高学年くらいのお子さんの興味や知識欲をほど良くそそってくれるのではないかと思います。おとなが読んでも当然おもしろい、そんな本です。

 

【表紙、冒頭の登場人物紹介ページ及び本文冒頭3ページ】

文 中山 茂大 写真 阪口 克『世界中からいただきます!』表紙_[0] 文 中山 茂大 写真 阪口 克『世界中からいただきます!』表紙裏_[0]

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【本文書き出し】

”モンゴル

モンゴルはとても広い国で、日本の約四倍の面積がある。しかし人口は三百六万人ほどしかいない。日本の人口は一億二千万人だから、それとくらべるとずいぶん少ない。国土の大半は草原で、遊牧にむいた土地だ。

私たちがお世話になったのは、ベギ・ドルスチェレンさんのお宅だった。羊や山羊、馬、牛そしてヤク(標高の高いところでもくらせる牛のなかま)をたくさん飼っている遊牧民で、「千の家畜をもつ男」として政府から表彰されたこともある。「遊牧民」は家畜の群れとともに、水や牧草をもとめて移動しながらくらす人たちのこと。広大な草原を移動しながら、家畜をそだててくらしているのだ。といっても…”

 

【基本データ】

偕成社

二〇一六年一二月 初版一刷

文 中山 茂大 写真 阪口 克『世界中からいただきます!』

ISBN978-4-03-645060-2

”この本、読ませてみたいな”と思ったら 



監修:小澤俊夫 再話:小沢昔ばなし大学再話研究会 絵:二俣英五郎『吉四六さん』

小峰書店 小澤俊夫『吉四六さん』

【メモ】

・とんちもあれば、ダジャレ、ものすごくシンプルなギャグもある。あまり肩肘張らずに、軽く読んでいける感じ。

・やはりおもしろいのはとんちばなし。描写が細かく、話もよく練られている。しかし、ギャク系もなかなか。たとえば「けちんぼ」という話はこんな話。— ”むかしあるところに、けちんぼとけちんぼが隣りあわせに住んでいた。ある日、かたっぽのけちんぼが、はしごが必要になり、下男に、もうひとりのけちんぼに、はしごを借りに行かせた。しかし、もうひとりのけちんぼは断る。すると、はしごを借りに行かせたけちんぼはこう言う。「なにっ、あのけちんぼめ。そんならしかたがない。◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯(さすがにオチは伏せ字にさせていただきました)」” — わずか10行1ページ足らずの短い文章の中に、シンプルにまとめられた、このおもしろさ。

・こういう昔の話を読む際(お子さんに読ませる際)には、古い単位についての知識を補足しておくと、さまざまなものを具体的なイメージがしやすく、よりスムーズに物語が楽しめるように思う。例えば、「一両は小判が一枚。江戸時代の一両は、現在の貨幣価値で10万円前後」「一石とは、十斗=百升で約150kg(容積にして180リットル程度)。俵にすると2.5俵。小判1枚で購入できる、つまり、現在の貨幣価値で10万円程度。例えば、”10万石の大名”といえば、現在の価値で100億円の収入のある大名(ただし、家臣の収める土地も含めて、お家全体での話)ということになる」「また、一石とは、当時の人間1人が1年間に食べる米の量とおおよそ等しかったといわれている。侍を1人動員するためには、年間30〜40石が必要とされたという話なので(米以外の食料や、衣類や住居、家族や使用人などにかかる費用含めてこの程度は必要という話)、”10万石の大名”であれば、3,000〜4,000人の侍を動員することのできる大名ということになる」など。

 

【子どもの読書に関わるデータ】

ふりがなの状況:総ルビではありませんが、かなりの漢字(恐らく、小学校低1〜3年生で習う程度の漢字以外)にはふりがなが振られています。

文字の大きさ:小さい。おとな向け文庫サイズと同等か、1-2ポイント程度大きいサイズ。

所感:ふりがなは小学校低学年でも読めるレベルまで振られています。そういった意味では、「小学校低学年からでも十分に読める本」といえると思います。その一方、内容的には、当然小さなお子さんでも理解できるような内容でありながらも、思わず考えさせられてしまうような内容もあり、小学校低学年〜中高生、おとなでも十分に楽しめる内容になっているかと思います(これは、「彦一とんちばなし」にも共通して言えることですが、日本の昔ばなしには、昔の人の知恵や教訓、道徳心など、時代を越えて語り継いでいくべき内容が多く含まれているのではないかと改めて感じさせられます)。

 

【表紙及び冒頭5ページ】

小峰書店「吉四六さん」表紙_[0] 小峰書店「吉四六さん」本文1_[0] 小峰書店「吉四六さん」本文2_[0]

小峰書店「吉四六さん」本文3_[0] 小峰書店「吉四六さん」本文4_[0] 小峰書店「吉四六さん」本文5_[0]

 

【本文書き出し】

” 吉四六さんの生き絵

ある晩、ひとりの旅人が、吉四六さんの家にやってきて、今晩の宿をたのみたいといいました。吉四六さんが、

「あなたは何をする人ですか」ときくと、旅人は、

「わしは絵師じゃ。これから、江戸へでていこうと思っている」と、こたえました。

「それならお泊りください」といって、吉四六さんは、絵師にごちそうをふるまい、泊めてやりました、絵師が宿代をきくと、吉四六さんは、

「わしゃあ、宿代などいりません。そのかわり、絵を描いてくれませんか」といいました。

「もちろん描こう。だがどんな絵がいいのかな」

すると、吉四六さんは、

「雨降りに傘をさして歩く人の絵と、同じ人が天気のいい日に傘をたたんで歩く絵を描いてください」といいました……”

 

【基本データ】

小峰書店

二〇一一年 三月 三日 第一刷発行

監修:小澤俊夫 再話:小沢昔ばなし大学再話研究会 絵:二俣英五郎『吉四六さん』

ISBN978-4-338-25806-7

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作 星新一  画 和田誠『きまぐれロボット』

フォア文庫 星新一「きまぐれロボット」表紙

【メモ】

・こちらも星新一氏のショートショート集の子ども向けの版。ただしこちらは、以前にご紹介した青い鳥文庫からのものではなく、フォア文庫から出版されているもの。31編収録。

・内容的には、過去から多数出版されている新潮文庫版の小説と全く変わらず、全ての漢字にふりがなが振られたもの(青い鳥文庫版の傑作選も、同じく、全ての漢字にふりがなが振られています)。

・青い鳥文庫版が、230〜250ページ程度で14編収録、1編平均16〜18ページ弱(話ごとにばらつきがありますので、実際には1編あたり10ページ台前半から20ページ弱、という感じでしょうか)なのに対して、こちらのフォア文庫版は、200ページ弱の中に31編収録、1編平均6.5ページという計算になります。また、文字のサイズとしても、青い鳥文庫よりもフォア文庫のほうが若干大きく、こういった点から考えるに、こちらのフォア文庫版のほうが、「より短く、より手軽に読める話」を多数収録していると言えるのではないかと思います。

(上が青い鳥文庫版「おーい でてこーい」、下がフォア文庫版「きまぐれロボット」です)

青い鳥文庫版とフォア文庫版の星新一の文字の大きさ比較_[0]

フォア文庫版のほうが1〜2ポイント程度フォントが大きく、より「子ども向け文庫らしい」装丁になっています。

(青い鳥文庫版 1ページあたり、1行40文字×14行=560文字)

(フォア文庫版 1ページあたり、1行37文字×12行=444文字)

 

【子どもの読書に関わるデータ】

ふりがなの状況:総ルビで、全ての漢字にふりがなが振られています。

文字の大きさ:比較的大きい。文庫サイズとしてはほぼ最大サイズ。

所感:「(SF)小説のおもしろさ」を知る最初の一冊として、最適な選択肢の1つ。文字の大きさ、1編の短さ、どれをとっても、まずはこのフォア文庫版から初めてみるのがよろしいのではないでしょうか。

 

【表紙、目次及び冒頭5ページ】

フォア文庫 星新一「きまぐれロボット」表紙_[0] フォア文庫 星新一「きまぐれロボット」目次1_[0] フォア文庫 星新一「きまぐれロボット」目次2_[0]

フォア文庫 星新一「きまぐれロボット」目次3_[0] フォア文庫 星新一「きまぐれロボット」本文1_[0] フォア文庫 星新一「きまぐれロボット」本文2_[0]

フォア文庫 星新一「きまぐれロボット」本文3_[0] フォア文庫 星新一「きまぐれロボット」本文4_[0] フォア文庫 星新一「きまぐれロボット」本文5_[0]

 

【基本データ】

青い鳥文庫

2005年6月 第1刷発行

作 星新一  画 和田誠「きまぐれロボット」

ISBN978-4-652ー07467-1

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