美達大和「人を殺すとはどういうことか-長期LB級刑務所・殺人犯の告白」

人を殺すとはどういうことか―長期LB級刑務所・殺人犯の告白 (新潮文庫) 表紙

【メモ】

・非常に高いIQを持ち、社会的にも成功した立場でありながら、自身の「信念」に基づいて2件の殺人事件を起こした著者。

・独自の視点で描かれる犯罪者像などは非常に興味深く面白かった。

・司法制度のあり方などについても考えさせられる。

・しかし、本質的な「問題点」の難しさもあり、最終的な「結論」にはどうしてもたどり着けぬまま話が終わってしまう辺り、若干不完全燃焼な感じもするし、読者自身が、自分の問題として引き続き考えていきたい、というスタンスであれば、十分に納得できる終わり方とも言える。

・時間の無いサラリーマンだと、継続して考え続けるほどの余裕もなく、モヤモヤした感じが残ってしまうかも。

・それを差し引いても、面白かったと思う。

 

(ここから先は、著者の年齢とかそういったものに関する情報をピックアップしてみる。読んでいて、イマイチいつの時代の出来事なのかよくわからない時があったので)

(1959年/昭和34年)著者生誕・著者情報より:1959年(昭和34年)生まれ

(1985年/昭和60年)一件目の殺人事件・32ページ4行目”初めての殺人事件は、私がヤクザの世界にいた時のことです。ヤクザ組織には二六歳から一年間、仕事はそのままで在籍していました。”:最初の殺人事件は26歳のとき。1985年に。

(二件目の殺人が何年なのか不明)

(恐らく逮捕は1990年/平成2年か1991年/平成3年)逮捕から初公判まで3ヶ月と考えると。

(1991年/平成3年)裁判開始・後述の裁判開始2年経過から逆算して、裁判開始は1991年。美達氏32歳のとき。

(1993年/平成5年)裁判開始後二年経過・68ページ10行目”裁判も2年近くが過ぎた頃”…68ページ12行目”俺は69歳だ”…69ページ2行目”お前が俺の歳になるのに35年あるんだ”:裁判2年目の段階で、父69歳、美達氏34歳。生まれ年1985年から計算して1993年ということ。また、父とは35歳差ということで、父は1924年生まれ。

(1994年/平成6年)刑務所収監・285ページ4行目”私が獄に入ってから、父とは七回の夏を共に迎えました…”とあり、後述2000年に父他界ということから逆算。裁判は一審三年で終了したものと。

(2000年/平成12年)父死去・128ページ5行目”父は先日喜寿を迎え…”。数え年で77歳とすれば実際は76歳。2000年丁度の年に父死去。著者美達氏は41歳。このときは既に服役中。収監7年め。

(2011年/平成23年?2009年/平成21年?)出版・本著は平成21年(2009年)1月刊行(315ページあとがきと巻末刊行記述より)で、75ページ14行目”私は、52歳になりますが”。1959年生まれの人が52歳ならば、2011年なはずで、本が出た年のさらに2年後という事ことになる矛盾。ちょっとここは不明。

 

【本文書き出しより】

”はじめに

人が人を殺める—。

現代の社会ではメディアを通して毎日のように殺人事件が報道されています。

「人を殺してみたかった」

「誰でもよかった」

我々、長期刑務所に服役している悪党でさえ、不可解としか感じられないような理由での殺人事件も起きています。

多くの人達にとって殺人による視野、殺人犯は決して身近なものではありません。その人物像はメディアを通して伝えられますが、どうしても扇情的な思惑が色濃く入ってしまい、意図的に創られたりしている気がします。人類最悪の滞在を犯す人間とは、本当はどういう人なのでしょうか?

斯く言う私はその大罪を犯した本人です。

それも時を空けて二人の尊い生命を奪いました。

私は衝動的にこの大罪を犯したのではありません。二件とも計画的に実行した確信犯です。

当時は、殺害するという行為は悪いが、その動機については相当たる理由があると考え、裁判でもその旨を陳述しました。弁護士の先生達には、「死刑でも無期でもどちらでも構いませんが、なぜこうなったのか、またことの是々非々は、はっきりさせて欲しい。よくある殺人罪の被告人のように、反省した振りやひたすら卑屈な態度はとりません」と話をして臨みました。結果は無期刑でしたが、私としてはがっかりしたものです。わたしの希望は死刑だったからです。

そんな訳で、泣く子も黙る長期刑務所に服役することが決まりました。今から十数年前の桜咲く頃でした。

アリストテレスは『形而上学』という著書の中で、人言は根源的に知りたいという原始的な欲求を持っているという主旨のことを記してしますが、私はこの言葉通り、生来いろんなことに対して「どうして?」「どうなってるの?」と異常に知りたがる性質なので、服役するにあたっては、自分のことは棚に上げて、長期刑務所には一体どんな鬼や悪魔がいるのだろうかと関心を持ちました。

長期刑務所というのは、判決確定時に勾留等の未決通算日数を差し引いいて残刑期が十年(平成二二年度までは八年)以上ある者が服役する刑務所です。刑務所には…”

人を殺すとはどういうことか―長期LB級刑務所・殺人犯の告白 (新潮文庫) 表紙

 

【基本データ】

美達大和「人を殺すとはどういうことか-長期LB級刑務所・殺人犯の告白」

新潮文庫

ISBN978-4-10-135861-1

平成23年11月1日発行

”この本、読ませてみたいな”と思ったら