宗田 理・作 はしもとしん・絵『ぼくらの七日間戦争』

角川つばさ文庫 宗田 理「ぼくらの七日間戦争」

【メモ】

・いまから30年以上も前、1985年に発行され、以後30年以上も多くの人に読まれている大ベストセラー小説。小説はその後シリーズ化もされていますが、映画化もされた1作目の本作は、さすがといった感じのおもしろさ。

・ひとりひとり異なるいろいろな不安や不満をかかえる中学1年生。その心の動きもよく描かれている一方で、さまざまなアイディアを練り、おとなたちと真っ向から対決する少年たちの姿を描いた痛快なストーリとしても楽しめます。

・1985年というと、昭和40年台後半生まれの僕はちょうど小学校高学年〜中学生といったところ。当時世間はバブル経済突入目前、世の中がどんどんおかしくなっていく一方で、団塊ジュニア世代と言われたこのころの小中学生は、非行問題やいじめ、過酷な受験戦争など、社会のストレスが濃縮されて、そのまま子どもたちの世界に「おり」のように溜まった、そんなものに日々触れながら生きていたように思います。いまの子どもたちのおかれた環境とはずいぶんちがうのかな、とも思う一方、いまの子どもたちが読んでも十分に楽しめる、時代をこえて楽しめるお話だと思います。

 

【子どもの読書に関わるデータ】

ふりがなの状況:総ルビで、全ての漢字にふりがなが振られています。

文字の大きさ:小さい。おとな向け文庫サイズと同等サイズ。

所感:つばさ文庫として想定している対象年齢は「小学上級から」。文字のサイズ、内容(中学生が主人公のお話ですので、思春期系の話もそれなりに出てきます)なども含めて考えると、小学校5年生〜6年生あたりをメインのターゲットとした本だと思います。が、読書好きの小3の息子は、結構長いこのお話、わずか数日で読破してしまい、数日後には、同シリーズの「ぼくらの怪盗戦争」と「ぼくらと七人の盗賊たち」を買ってきて、そちらもむさぼるように読んでいました。人によるとは思いますが、小3〜小4程度でも十分に読むことのできる本だと思います。

 

【表紙及び冒頭5ページ】

つばさ文庫 宗田 理「ぼくらの七日間戦争」表紙_[0]つばさ文庫 宗田 理「ぼくらの七日間戦争」本文1_[0] つばさ文庫 宗田 理「ぼくらの七日間戦争」本文2_[0]

つばさ文庫 宗田 理「ぼくらの七日間戦争」本文3_[0] つばさ文庫 宗田 理「ぼくらの七日間戦争」本文4_[0] つばさ文庫 宗田 理「ぼくらの七日間戦争」本文5_[0]

 

【本文書き出し】

”一日 宣戦布告

 

1

掛け時計の長針と短針が重なった。

正午。

さっきからそれを見つめていた菊地詩乃は、あらためて大きな溜息をついた。

予定の帰宅時間から一時間もおくれている。最初の苛立ちが、いつの間にか不安にすり変わっていた。何かあったのだどうか?

—交通事故?

まさか。学校からの帰り道に交通事故なんて、起きると考える方がどうかしている。

成績がわるくて、学校に残されたのだろうか?

一人息子の英治は中学一年。きょうは一学期の終業式である。いくらおそくても、十一時には帰れるはずだ。

そうしたら、十一時半に英治をアウディ80に乗せて家を出発。十二時十分に、池袋のサンシャインビルの前で夫の英介を拾う。

英介の会社はサンシャインビルにあるのだが、きょうの午後から休みをとり、日曜日までの三日間、軽井沢で親子三人テニスをやったり、高原のドライブをしたりしようという計画である。

計画を立てたのは……”

 

【基本データ】

角川つばさ文庫

2009年3月3日 初版発行

宗田 理・作 はしもとしん・絵「ぼくらの七日間戦争」

ISBN978-4-04ー631003-3

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作 星新一  画 和田誠『きまぐれロボット』

フォア文庫 星新一「きまぐれロボット」表紙

【メモ】

・こちらも星新一氏のショートショート集の子ども向けの版。ただしこちらは、以前にご紹介した青い鳥文庫からのものではなく、フォア文庫から出版されているもの。31編収録。

・内容的には、過去から多数出版されている新潮文庫版の小説と全く変わらず、全ての漢字にふりがなが振られたもの(青い鳥文庫版の傑作選も、同じく、全ての漢字にふりがなが振られています)。

・青い鳥文庫版が、230〜250ページ程度で14編収録、1編平均16〜18ページ弱(話ごとにばらつきがありますので、実際には1編あたり10ページ台前半から20ページ弱、という感じでしょうか)なのに対して、こちらのフォア文庫版は、200ページ弱の中に31編収録、1編平均6.5ページという計算になります。また、文字のサイズとしても、青い鳥文庫よりもフォア文庫のほうが若干大きく、こういった点から考えるに、こちらのフォア文庫版のほうが、「より短く、より手軽に読める話」を多数収録していると言えるのではないかと思います。

(上が青い鳥文庫版「おーい でてこーい」、下がフォア文庫版「きまぐれロボット」です)

青い鳥文庫版とフォア文庫版の星新一の文字の大きさ比較_[0]

フォア文庫版のほうが1〜2ポイント程度フォントが大きく、より「子ども向け文庫らしい」装丁になっています。

(青い鳥文庫版 1ページあたり、1行40文字×14行=560文字)

(フォア文庫版 1ページあたり、1行37文字×12行=444文字)

 

【子どもの読書に関わるデータ】

ふりがなの状況:総ルビで、全ての漢字にふりがなが振られています。

文字の大きさ:比較的大きい。文庫サイズとしてはほぼ最大サイズ。

所感:「(SF)小説のおもしろさ」を知る最初の一冊として、最適な選択肢の1つ。文字の大きさ、1編の短さ、どれをとっても、まずはこのフォア文庫版から初めてみるのがよろしいのではないでしょうか。

 

【表紙、目次及び冒頭5ページ】

フォア文庫 星新一「きまぐれロボット」表紙_[0] フォア文庫 星新一「きまぐれロボット」目次1_[0] フォア文庫 星新一「きまぐれロボット」目次2_[0]

フォア文庫 星新一「きまぐれロボット」目次3_[0] フォア文庫 星新一「きまぐれロボット」本文1_[0] フォア文庫 星新一「きまぐれロボット」本文2_[0]

フォア文庫 星新一「きまぐれロボット」本文3_[0] フォア文庫 星新一「きまぐれロボット」本文4_[0] フォア文庫 星新一「きまぐれロボット」本文5_[0]

 

【基本データ】

青い鳥文庫

2005年6月 第1刷発行

作 星新一  画 和田誠「きまぐれロボット」

ISBN978-4-652ー07467-1

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かさい まり・作/絵『こぐまのクーク物語 はじめての海とキャンプ』

つばさ文庫かさい まり・作:絵「こぐまのクーク物語 はじめての海とキャンプ」

【メモ】

・クークのお父さんの車と、ゲンゲンのお父さんの車。2台の車にのり込んで、初めての海に向かうなかよしの3匹、こぐまのクーク、こぎつねのゲンゲン、こうさぎのサーハ。初めての海がうれしすぎて、楽しみすぎて、くるまの中で思わずうめき声をあげながら、それをぐっとこらえるクーク。海で、初めて波がお腹にあたって、あんまり楽しくてわらってしまうサーハ。つぎからつぎへと打ちよせる波にとっしんして、波をかぶるゲンゲン。楽しそうに遊ぶ子どもたちの姿が目に浮かんでくるかのような、読みやすくてわかりやすい文章。さすがは絵本作家さんの書いた本、という感じです。

・なかよし3匹とその家族の生活を描いた、ほんわかとしたストーリー。おとなが読むと、思わず、子どもと一緒に何かをしたり、どこかにお出かけしたくなってしまいますので要注意です。

 

【子どもの読書に関わるデータ】

ふりがなの状況:総ルビで、全ての漢字にふりがなが振られています。

文字の大きさ:大きい。文庫サイズとしては、ほぼ最大くらいのサイズです。

所感:絵本作家でもあるかさいまり氏の「こぐまのクーク」シリーズ。こちらは絵本ではありませんが、全編にわたって、ほぼすべてのページに、鉛筆で描かれた柔らかみのあるかわいらしい挿絵が入っています。「絵本」を卒業して「本を読む」、その最初の一冊に最適な一冊だと思います。

 

【表紙及び冒頭5ページ】

角川つばさ文庫 かさいまり「こぐまのクーク物語 はじめての海とキャンプ」表紙_[0]角川つばさ文庫 かさいまり「こぐまのクーク物語 はじめての海とキャンプ」本文1_[0]角川つばさ文庫 かさいまり「こぐまのクーク物語 はじめての海とキャンプ」本文2_[0]

角川つばさ文庫 かさいまり「こぐまのクーク物語 はじめての海とキャンプ」本文3_[0] 角川つばさ文庫 かさいまり「こぐまのクーク物語 はじめての海とキャンプ」本文4_[0] 角川つばさ文庫 かさいまり「こぐまのクーク物語 はじめての海とキャンプ」本文5_[0]

 

【基本データ】

つばさ文庫

2013年6月15日 初版発行

かさい まり・作/絵「こぐまのクーク物語 はじめての海とキャンプ」

ISBN978-4-04-631321-8

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