【メモ】
・「ものすごく豪華でなくても、美味しい」、日々日常の生活の中にある「食」という歓びを、読みやすい文章で自然体に綴ったエッセイ集。食べることが好きなんだろうなと感じさせらます。
・どの話もおもしろく、なんでも美味しそうですが、取り上げられている中では、和食とイタリアンが特に美味しそうに感じました。僕が好きだから、というのもあるでしょうが、きっと、作者の安野モヨコさんもお好きなのではないかと。
・独特の味のある挿絵も、さすが人気漫画家さんといった感じ で、これだけでも楽しめます。
【本文書き出し】
”冷やしたぬきとかりんとう
昼食を食べている時に、建具屋さんがやって来た。
家の窓やら扉などでいくつか閉まりづらいものが有ったので直してもらったのだ。
二階の網戸を調整して、一階に降りて来た建具屋さんが、どことどこの調子がおかしかったけど、こんな風に直しておいたので大丈夫になりましたよ、と話している間、お箸を止めてふんふんと聞いていた。
夫は立ち上がって玄関口で他にもある不具合の説明をしていたが、私はまた食事にとりかかっていた。
「じゃ、奥さん、またどうも」
と、建具屋さんがこっちに首を出して挨拶した時、丁度お味噌汁の底のじゃがいもをお箸でちょんと口に放り込んだところだった。
昨日観ていた昔の映画では、バーのホステスさん達が開店前に冷やしたぬきか何かをかっこんでいるのだけれど、二口、三口食べたところで客がドヤドヤやって来る。するとホステスさん達は、いそいでその食べ始めたばかりの丼を流しに置き、くるりと振り返って……”
【表紙及び冒頭5ページ】
【基本データ】
文春文庫
2013年12月10日 第1刷
安野モヨコ『くいいじ』
ISBN978-4-16-777702-9
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