【メモ】
・「ありえなさ”過ぎない”」。例えば、星新一氏のショートショートなどは、設定の舞台が遠い過去やはるか未来であったりして、話全体がそもそも現実離れしている(というと語弊があるかもしれませんが、「設定としては」という意味で)ものが多いように思いますが、小松左京氏の本短編集は、そういった意味では、「現在の、この現実社会をベースとしたSF」というテイストです。現在のこの世界に暮らす「ケンちゃん」や「ヨシコ」が、「未来人」や「宇宙人」と会う、そんな話だからこその「読みやすさ」があると思います。
・前述の、「現実社会」と「SFの世界」が交差する、その部分に生まれるおもしろさを軸に話が展開する、そういった作品が多いように思います。
・子どものころ、加納一郎氏の児童向けSF小説にハマって、これでもかというくらいにたくさん読んだのですが、今になって思うと結構近いものがあったような。加納一郎氏の作品のほうが、より現実離れしていて、よりギャグテイストが強い。もう1度読んでみたいけれど、すでにどれも絶版のようで……。いまも売られているならば、うちの子どもたちにもぜひ読ませてみたかったですが、残念です。
【子どもの読書に関わるデータ】
ふりがなの状況:総ルビで、すべての漢字にふりがなが振られています。
文字の大きさ:比較的大きい。
所感:本編170ページ強の中に25編の短編を収録。1話平均7ページ弱。文字が比較的大きいこと、内容的にも、シンプルなストーリーのものが多いことなども含め、小学校低学年、2年生〜3年生程度でも十分に読むことのできる内容かと思います。一方で、SF的な軸、それが小学生くらいの少年たちの日常と絡み合って展開するストーリー、という部分では、小学校高学年であっても十分に楽しめる1冊なのではないかと(例えば、ドラえもんのおもしろさは、小学校低学年でも高学年でも、そして、おとなでも楽しめる、そういったおもしろさだと思いますが、それに近いものがあるのではないかと思います)。
【表紙、目次及び冒頭3ページ】
【本文書き出し】
” 算数のできない子孫たち
「ああ、うんざりしちゃったなァ。」と良夫くんがためいきをついてえんぴつをほうりだした。
「まったく、こんなに算数のしゅくだいがあっちゃ、たまらないな。」とケンちゃんもいった。
「いやだなあ、頭がいたくなってくる。」良夫くんは、あおむけになってつぶやいた。
「ほんとだ。算数なんて大きらいだ。」とケンちゃん。
「算数のない国へ行きたいや。」
そのとき、とつぜん二人が勉強している部屋の外で、ドーンと大きな音がした。ジェット機でもおちたのかと思って、まどから庭をのぞいてみると、ジェット機ではなくて、銀色の大きな球が、庭のキリの木にぶつかって、かすかなけむりをたてていた。−−−見ているうちに、その球の横腹がポカリとあおいて、中からみょうな服を着た、二人の男がおりてきて……”
【基本データ】
青い鳥文庫
1981年8月10日 第1刷発行
小松左京/作 堤 直子/絵『宇宙人のしゅくだい』
ISBN4-06-147074-4
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