原作 ポーラ・ハリソン ”王女さまのお手紙つき” シリーズ 『内気なティアラの新学期』

【メモ】

・古いお城を校舎に利用した、王女さまだけが入学できる特別な学園、全寮制の名門女子校ロイヤル・アカデミー。そこに新入生としてやってきた、少し内気な主人公・エラ姫。そこで出会う素晴らしい仲間たちと先輩たち、そして、厳しく神経質な先生やいじわるな先輩方。

・どこかで聞いたいくつかのお話の設定を混ぜ合わせたような感じですが、内容的には意外としっかりしていて、物語としてもけっこう楽しめる内容になっていると思います。あくまで個人の感想ですが、ディズニーのDlifeでやっているお姫様系のTVアニメと、「生き残った男の子」が登場する、例のユニバーサルスタジオの主力コンテンツとをミックスしたような感じでしょうか。こう書いてしまうと、なんだかパクりで作った寄せ集めストーリーのように聞こえてしまうかも知れませんが、やはり舞台設定というのは大事なもののようで、登場人物たちが活き活きと動くさまが、とてもわかりやすくおもしろく、おとなが読んでもそこそこ読めるレベル(あくまで、子どもと一緒に読む、というレベルですが)のお話に仕上がっていると思います。

・よくあるプリンセスもの、かわいらしいだけがメインのお話ではなくて、おもいやりや道徳心など、子どもに読ませたい、考えさせたいようなエピソードも、けっこう頻繁に出てきたりします。

(見開き2ページですので、右側から読んで下さい)

ポーラ・ハリソン 王女さまのお手紙つきシリーズ「内気なティアラの新学期」の、ちょっと道徳っぽい話 左 ポーラ・ハリソン 王女さまのお手紙つきシリーズ「内気なティアラの新学期」の、ちょっと道徳っぽい話 右

 

【子どもの読書に関わるデータ】

ふりがなの状況:総ルビで、すべての漢字にふりがなが振られています。

文字の大きさ:比較的大きい。

所感:子ども向け、小学校低学年向けのハードカバーの書籍ですが、使用されている漢字は比較的多く、小学校3年生で習うレベルの漢字程度まで含まれています。しかし、全ての漢字にはルビが振られていますので、小学1年、2年のお子さんでも十分に読めるのではないかと思います。また、内容的にも、「王女さまだけが入学できる特別な学園 ロイヤル・アカデミー」を舞台にしたお話で、そこでいろいろなハプニングが起こり、お友だちと力をあわせて、という感じで、小学校低学年のお子さんでも興味を持って読み進めていけるような内容かと思います(うちの小学校1年の娘は、読書があまり得意でないのですが、この本は頑張って一週間ほどで読破し、数日後にはシリーズの続編を購入してもらっていました)。

 

【表紙、冒頭の登場人物紹介ページ及び本文冒頭3ページ】

ポーラ・ハリソン 王女さまのお手紙つきシリーズ「内気なティアラの新学期」表紙_[0] ポーラ・ハリソン 王女さまのお手紙つきシリーズ「内気なティアラの新学期」中1_[0] ポーラ・ハリソン 王女さまのお手紙つきシリーズ「内気なティアラの新学期」登場人物紹介1_[0]

ポーラ・ハリソン 王女さまのお手紙つきシリーズ「内気なティアラの新学期」登場人物紹介2_[0] ポーラ・ハリソン 王女さまのお手紙つきシリーズ「内気なティアラの新学期」本文1_[0] ポーラ・ハリソン 王女さまのお手紙つきシリーズ「内気なティアラの新学期」本文2_[0]

ポーラ・ハリソン 王女さまのお手紙つきシリーズ「内気なティアラの新学期」本文3_[0]

 

【基本データ】

学研

2017年2月21日 第1刷発行

原作 ポーラ・ハリソン 王女さまのお手紙つきシリーズ『内気なティアラの新学期』

ISBN978-4-05-204574-5

”この本、読ませてみたいな”と思ったら 



シンガー・作 橘高弓枝・訳『小説版 美女と野獣』

【メモ】

・文中に出てくる表現は比較的難しい。「みちたりた」「荘厳な」「かけ離れ」「忠誠をちかう」「みすぼらしい」「お慈悲」「まばゆいばかりの」などなど。赤川次郎氏重松清氏の小説よりは、間違いなく難しい文章。小学校低学年だと、読めても、ちょっと入り込んでいけないかも。もう少し平易な表現をしてくれたほうが、お話には入り込みやすいかも。

・そういった意味では、小学校高学年(もしかすると3年生くらいからでも)、「あえて読ませる」「この本を通して、そこそこ難しい表現に触れさせる」という手はあるかも。気に入って繰り返し読めば、語彙力も向上する。

・物語後半になって、ベルと野獣、周囲の召使いたちなど、登場人物同士のやりとりや会話が中心になってくると、少し読みやすい感じになってくる。

・ストーリー的には好き。とても良いと思う。自らの冷たい心が原因で魔女に呪いをかけられ、醜い姿に成り果ててしまった野獣。父の身を思い、自ら身代わりとして野獣の城の囚われの身になることを申し出るベル。外観にとらわれずに、内面を見て野獣に接するベル。ベルと接することで、相手を思いやるということを知る野獣。ベルとベルの父親のことを思い、自らの呪いを解くことを諦め、ベルを開放する野獣。「魔法の力で王子さまと結婚」とかじゃなくて、「真実の愛」や「勇気」といったものの価値をしっかりと描いた作品。『人の真の値打ちは、外見だけでは判断できません(本文100ページ7行目)』。愛とは、相手のことを思いやる気持ちのこと。人間味あふれ、やさしく親切な、すばらしい召使いたちの姿がまた良い。子どもにぜひ読ませたい。

 

【子どもの読書に関わるデータ】

ふりがなの状況:総ルビで、すべての漢字にふりがなが振られています。

文字の大きさ:比較的大きい。

所感:本当に素晴らしい内容。ディズニーだから良いとか良くないとかではなく、子どもに読ませたい一冊。名作だと思います。

 

【表紙、冒頭の絵本ページ及び本文冒頭3ページ】

偕成社「美女と野獣」小説・表紙_[0]偕成社「美女と野獣」小説・絵本部分3_[0]偕成社「美女と野獣」小説・絵本部分4_[0]

偕成社「美女と野獣」小説・本文1_[0] 偕成社「美女と野獣」小説・本文2_[0] 偕成社「美女と野獣」小説・本文3_[0]

※本の頭部分に、ディズニーのアニメの絵を使って作った8ページの簡易な絵本がついています。

 

【本文書き出し】

” 1 魔女の呪い

はるか昔、遠く離れた土地に、魔法のような美しい王国があった。この王国は輝かしい光にみちあふれていた。土地はゆたかな緑におおわれ、人びとはみちたりた幸せな日々を送り、森の中にそびえる城は、美しい王国のシンボルにふさわしく、堂々とした荘厳なたたずまいを見せていた。

ところが、この王国の若い王子だけは、ほかとはかけ離れ、まるで別世界の住人のようだった。

王子は、幼いころから望むものすべてを与えられて育ってきたが、心は氷のように冷たいままで、まるで温かみが感じられなかった。わがままで、身勝手で、思いやりのかけらもなかった。

それでも、少年時代の王子は、いまほどひどくはなかった。わんぱくなところはあったけれど、茶目っけのあるかわいい少年だった。

そんな愛らしい少年の心から、やさしさや思いやりがなくなったのは、なぜだろうか……”

 

【基本データ】

偕成社

1997年12月 1刷

シンガー・作 橘高弓枝・訳『美女と野獣』

ISBN978-4-03-791100-3

”この本、読ませてみたいな”と思ったら 



小松左京/作 堤 直子/絵『宇宙人のしゅくだい』

青い鳥文庫 小松左京『宇宙人のしゅくだい』

【メモ】

・「ありえなさ”過ぎない”」。例えば、星新一氏のショートショートなどは、設定の舞台が遠い過去やはるか未来であったりして、話全体がそもそも現実離れしている(というと語弊があるかもしれませんが、「設定としては」という意味で)ものが多いように思いますが、小松左京氏の本短編集は、そういった意味では、「現在の、この現実社会をベースとしたSF」というテイストです。現在のこの世界に暮らす「ケンちゃん」や「ヨシコ」が、「未来人」や「宇宙人」と会う、そんな話だからこその「読みやすさ」があると思います。

・前述の、「現実社会」と「SFの世界」が交差する、その部分に生まれるおもしろさを軸に話が展開する、そういった作品が多いように思います。

・子どものころ、加納一郎氏の児童向けSF小説にハマって、これでもかというくらいにたくさん読んだのですが、今になって思うと結構近いものがあったような。加納一郎氏の作品のほうが、より現実離れしていて、よりギャグテイストが強い。もう1度読んでみたいけれど、すでにどれも絶版のようで……。いまも売られているならば、うちの子どもたちにもぜひ読ませてみたかったですが、残念です。

 

【子どもの読書に関わるデータ】

ふりがなの状況:総ルビで、すべての漢字にふりがなが振られています。

文字の大きさ:比較的大きい。

所感:本編170ページ強の中に25編の短編を収録。1話平均7ページ弱。文字が比較的大きいこと、内容的にも、シンプルなストーリーのものが多いことなども含め、小学校低学年、2年生〜3年生程度でも十分に読むことのできる内容かと思います。一方で、SF的な軸、それが小学生くらいの少年たちの日常と絡み合って展開するストーリー、という部分では、小学校高学年であっても十分に楽しめる1冊なのではないかと(例えば、ドラえもんのおもしろさは、小学校低学年でも高学年でも、そして、おとなでも楽しめる、そういったおもしろさだと思いますが、それに近いものがあるのではないかと思います)。

 

【表紙、目次及び冒頭3ページ】

青い鳥文庫 小松左京「宇宙人のしゅくだい」表紙_[0] 青い鳥文庫 小松左京「宇宙人のしゅくだい」目次1_[0] 青い鳥文庫 小松左京「宇宙人のしゅくだい」目次2_[0]

青い鳥文庫 小松左京「宇宙人のしゅくだい」本文1_[0] 青い鳥文庫 小松左京「宇宙人のしゅくだい」本文2_[0] 青い鳥文庫 小松左京「宇宙人のしゅくだい」本文3_[0]

 

【本文書き出し】

” 算数のできない子孫たち

「ああ、うんざりしちゃったなァ。」と良夫くんがためいきをついてえんぴつをほうりだした。

「まったく、こんなに算数のしゅくだいがあっちゃ、たまらないな。」とケンちゃんもいった。

「いやだなあ、頭がいたくなってくる。」良夫くんは、あおむけになってつぶやいた。

「ほんとだ。算数なんて大きらいだ。」とケンちゃん。

「算数のない国へ行きたいや。」

そのとき、とつぜん二人が勉強している部屋の外で、ドーンと大きな音がした。ジェット機でもおちたのかと思って、まどから庭をのぞいてみると、ジェット機ではなくて、銀色の大きな球が、庭のキリの木にぶつかって、かすかなけむりをたてていた。−−−見ているうちに、その球の横腹がポカリとあおいて、中からみょうな服を着た、二人の男がおりてきて……”

 

【基本データ】

青い鳥文庫

1981年8月10日 第1刷発行

小松左京/作 堤 直子/絵『宇宙人のしゅくだい』

ISBN4-06-147074-4

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